
モーリス・ベジャールが振付けた三作品――ストラヴィンスキーの「火の鳥」、マーラーの「さすらう若者の歌」、そしてラヴェルの「ボレロ」。
バレエ史に刻まれる名作を、最高峰の舞踊団であるパリ・オペラ座がどのように表現したのか…深夜の芸術鑑賞にぴったりの放送です。
「火の鳥」―神話と再生のバレエ
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
振付:モーリス・ベジャール
ロシア民話に登場する伝説の鳥「火の鳥」。不死の象徴であり、破壊と再生を繰り返す存在です。
ストラヴィンスキーの代表作であるこの音楽は、ディアギレフのバレエ・リュスのために書かれ、1910年にパリで初演されました。
ベジャール版では、物語性よりも象徴的な力や生命のエネルギーを抽出。振付は力強く、火の鳥の神秘性を舞踊によって抽象的に描いています。
主な出演:
- 火の鳥:マチュー・ガニオ
- 不死鳥:フロリモン・ロリュー
ガニオのしなやかで崇高な踊りと、幻想的な照明演出にも注目です。
「さすらう若者の歌」―マーラーと踊る魂の対話
音楽:グスタフ・マーラー(バリトン歌唱付き)
振付:モーリス・ベジャール
マーラーが若き日の失恋をもとに作曲した歌曲集『さすらう若者の歌』。
その4つの歌曲をベジャールは2人のダンサー(赤と青)と1人のバリトン歌手で構成し、舞台上に三重の対話を生み出します。
愛、喪失、放浪、内なる叫び…。
赤と青の男性ダンサーが互いに交差し、時にぶつかり、支え合うことで、マーラーの深い情感を“可視化”しています。
主な出演:
- 赤のソリスト:オードリック・ベザール
- 青のソリスト:フロラン・メラック
- バリトン:サミュエル・ハッセルホルン
歌と踊りが一体となる舞台は、まるで詩の中に立ち現れる夢のようです。
「ボレロ」―ベジャール芸術の真髄、肉体とリズムの祭典
音楽:モーリス・ラヴェル
振付:モーリス・ベジャール
ラヴェルの『ボレロ』といえば、今やクラシックの中でも最も知名度の高い一曲。
ベジャールはこの音楽に“官能と陶酔”を見出し、中央のテーブル上で踊るひとりのダンサーと、それを取り囲む群舞というシンプルな構成に仕上げました。
ひとつの旋律が延々と繰り返されながら、少しずつオーケストレーションが厚くなっていく構造。
それに合わせて、観客の熱狂と期待も、舞台上の緊張感も高まり続けます。
今回の主役は、女性ダンサーのアマンディーヌ・アルビッソン。
彼女の硬質でありながら柔らかな動きが、全体を美しくまとめあげています。
パリ・オペラ座バレエ団とベジャールの関係
モーリス・ベジャールは自身のバレエ団(ベジャール・バレエ・ローザンヌ)を拠点に活躍しましたが、パリ・オペラ座でもその作品は多く上演されてきました。
哲学的・精神的なテーマを身体で表現することに長けたベジャール作品は、芸術性を重んじるオペラ座のダンサーたちによって、繊細かつ力強く再現されています。
2023年5月に収録されたこの映像は、現代のパリ・オペラ座が捉えるベジャールの精神ともいえる、貴重な公演記録です。
◇パリ・オペラ座バレエ
「ベジャール・プログラム」【5.1サラウンド】【再放送】
(午前3時07分30秒~午前4時10分00秒)<演目>
「火の鳥」/「さすらう若者の歌」/「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:ストラヴィンスキー/マーラー/ラヴェル
<出演>
「火の鳥」
火の鳥:マチュー・ガニオ
不死鳥:フロリモン・ロリュー
「さすらう若者の歌」
赤のソリストオードリック・ベザール
青のソリスト:フロラン・メラック
バリトン:サミュエル・ハッセルホルン
「ボレロ」
アマンディーヌ・アルビッソン
パリ・オペラ座バレエ団
管弦楽:パリ・オペラ座管弦楽団
指揮:パトリック・ランゲ収録:2023年5月19・25日 パリ・オペラ座 バスチーユ
ベジャール作品を観るということ
バレエ=物語、と思っている方にこそ観てほしい作品群。
言葉ではなく「身体」が語る世界。
ベジャールのバレエは、観る人の心に問いを投げかけてきます。
深夜、静かな時間にじっくりと味わいたい名作集。
ぜひ録画してでも観てください。






