
イプセンの名作とグリーグの名旋律を舞踊で甦らせた本作は、幻想とリアルが交錯する心理劇のようなバレエです。奇抜な衣装と舞台美術、音楽と振付の融合によって、ペールの人生旅が鮮烈に描き出されます。特にペール、トロール、ソルヴェーグの対比や、その内面変容の描写には目が離せません。
NHK BSプレミアムシアターでの放送は8月10日深夜から。現代的な感性と古典的音楽が交差する至高の舞台を、ぜひお見逃しなく。
ミラノ・スカラ座バレエ「ペール・ギュント」
◇放送内容
ミラノ・スカラ座バレエ「ペール・ギュント」
(午前0時05分30秒~午前1時55分30秒)
台本・振付:エドワード・クルグ
原作:ヘンリク・イプセン
音楽:エドヴァルト・グリーグ
<出演>
ペール・ギュント:ナブリン・ターンブル
ソルヴェイグ:アリーチェ・マリアーニ
死:アンドレア・クレシェンツィ
鹿:エマヌエーレ・カッツァート
オーセ(ペールの母):アントネッラ・アルバーノ
イングリッド(花嫁):リンダ・ジュベッリ
ほか
ミラノ・スカラ座バレエ団
ピアノ:レオナルド・ピエルドメニコ
管弦楽:ミラノ・スカラ座管弦楽団
収録:2025年4月18日 ミラノ・スカラ座(イタリア)
🎭 物語のあらすじと構造
『ペール・ギュント』はヘンリック・イプセンの同名戯曲(1867年)が原作。
主人公ペールは、自分探しの旅に出て成功と愛を追い求めるも、最後には恋人ソルヴェーグの元へ帰り、真の自己と人生の意味を見つけます。
グリーグが作曲した音楽『ペール・ギュント』組曲(1875年)には、「朝の気分(Morning Mood)」「山の魔王の宮殿で(In the Hall of the Mountain King)」など名曲が含まれています。
エドワード・クルグは、この文学と音楽を融合し、イプセンの物語を時系列に沿って再構築。グリーグの戯曲音楽だけでなく、コンサート曲や室内楽曲も大胆に挿入し、ドラマ性と動きを兼ね備えたバレエ作品として完成させました
🎨 作品の特徴
幻想的な舞台美術と衣装
クルグの演出はリアルと夢幻の境界を漂わせます。
衣装デザイン担当のレオ・クラシュは、農村風の衣装から角の生えたトロール、緑髪の乳母、四人の狂人まで異形キャラクターを創出。
特に、緑の女性の背面に顔を配置するなど奇抜な表現が舞台に不思議な緊張感と美をもたらしています
音楽的特徴: エドヴァルド・グリーグが作曲した付随音楽が使用されており、特に「朝」「アニトラの踊り」「山の魔王の宮殿にて」「ソルヴェイの歌」などの有名な楽曲が効果的に使われています。これらの音楽は北欧の自然や民族的な要素を色濃く反映しています。
振付と演出: スカラ座版では、伝統的なクラシックバレエの技法と現代的な表現が融合されています。ペールの内面の葛藤や幻想的な場面が、洗練された振付によって表現されます。
舞台美術: ノルウェーの雄大な自然から異国の風景まで、物語の舞台の変化に応じて多彩な舞台美術が展開されます。
🔍 見どころポイント
主人公の心理描写: ペール・ギュントという複雑な人物の成長と変化が、ダンスを通じて巧みに表現されます。彼の傲慢さ、弱さ、そして最終的な救済への道のりが見どころです。
自我と向き合い、最後に自己を見出す心理的プロセスが、振付と演技を通じて鮮明に描き出されている点は大きな魅力。幻想的な象徴性と現実的感情がせめぎ合う舞台に注目です
幻想的な場面: 山の魔王の宮殿での超自然的な場面や、ペールの冒険における異国的な踊りなど、視覚的に美しく印象的なシーンが多数あります。
ソルヴェイとの愛の物語: 純粋で献身的なソルヴェイとペールとの関係は、作品全体を通じて重要なテーマとなっており、特に最終幕での再会の場面は感動的です。
グリーグの音楽との融合: 世界的に愛されるグリーグの音楽と、スカラ座の一流ダンサーたちの技術が織りなす芸術的な調和が、この作品の大きな魅力となっています。
文学的深み: イプセンの原作が持つ哲学的なテーマ(自己探求、真の愛、人生の意味など)が、バレエという芸術形式を通じて新たな解釈で表現されています。
この作品は、北欧文学の傑作をバレエ化した貴重な作品として、文学的価値と舞踊芸術の両方を楽しめる稀有な作品といえます。
NHK BSプレミアムシアターでの放送は8月10日深夜から。ミラノ・スカラ座バレエ「ペール・ギュント」お楽しみください。
この放送をきっかけに、より多くの皆様がバレエの魅力に触れることを願っています!




