
『くるみ割り人形』といえば、
雪の国、花のワルツ、金平糖の踊り。
多くの人にとって、それは華やかなクリスマスの物語でしょう。
しかし、
ジョン・ノイマイヤーが創作した
ハンブルク・バレエ版は、
まったく異なる光を放ちます。
少女マリーの物語
この作品の主人公は12歳のマリー。
誕生日に贈られるのは、くるみ割り人形とピンクのトウシューズ。
姉のように美しく踊りたい。
その憧れが、物語の原動力になります。
夢の中で現れるのは、
風変わりなバレエマスター、ドロッセルマイヤー。
彼はマリーを劇場へと導きます。
そこにあるのは、
おとぎ話ではなく「舞台の現実」。
宮廷劇場のリハーサル、
クラシック作品の数々、
踊るという行為そのもの。
マリーは観客であり、
やがて踊り手となり、
そしてひとりの若い女性へと成長していきます。
プティパへのオマージュ
この作品は、
19世紀クラシック・バレエを完成させた振付家
マリウス・プティパへのオマージュでもあります。
劇中で引用されるクラシックの名場面。
形式美。
構築された群舞。
それは単なる物語ではなく、
「バレエという芸術」そのものを見せる構造になっています。
チャイコフスキーの記憶
もちろん音楽は
ピョートル・チャイコフスキー。
「花のワルツ」
「金平糖の踊り」
誰もが知る旋律が、
幼少期の記憶を静かに呼び起こします。
そこに重なる
ユルゲン・ローゼの幻想的な舞台美術。
夢と現実が交差する空間が生まれます。
子どものための作品か、大人のための作品か
この『くるみ割り人形』は、
子どもの夢物語であると同時に、
「芸術に出会い、心が成熟していく過程」
を描いた作品です。
それは、
バレエを学ぶ子どもたちの姿とも重なります。
トウシューズに憧れ、
舞台を夢見て、
少しずつ大人になっていく。
ノイマイヤーは、
その瞬間を美しくすくい上げました。
画面の向こうで踊るマリーに、
きっと誰かの幼い日の夢が重なるはずです。

そしてもうひとつ。
このノイマイヤー版『くるみ割り人形』は、
テレビ放送でもご覧いただけます。
【放送予定】
NHK BSプレミアムシアター
3月22日(日)午後11時20分〜
舞台に憧れ、芸術に出会い、
少女が静かに成長していく物語。
ご自宅でその世界に触れる時間も、
きっと豊かな体験になるでしょう。
なお同日には、
ジョン・ノイマイヤーの創作の歩みを追った
ドキュメンタリー「ノイマイヤー ライフ・フォー・ダンス」(再放送)、
そして
ハンブルク・バレエによる
『ガラスの動物園』(再放送・5.1サラウンド)も放送予定です。
『ガラスの動物園』については、
こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
▶ https://nozawa-ballet.org/blog/nhkbs4kballet-ballet-glass-zoo/

夢の物語と、創作の人生。
そして成熟した心理劇。
ノイマイヤーの世界を一夜で辿る、
貴重な放送になりそうです。
画面の向こうの舞台が、
それぞれの心の中に、小さな灯りをともしますように。
バレエは、ただ踊る技術ではなく、心が育つ時間でもあります。
当スタジオのレッスンについてはこちらもご覧ください。
(→体験レッスンページ)


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