
NHK BSで再放送される
ウィーン国立バレエ団の「海賊」。
しかし今回あらためて考えたいのは、
この上演そのものではなく、
バレエ作品としての「海賊」の立ち位置である。
私にとって「海賊」は、
長いあいだ“全幕作品”ではなかった。
それは、ひとつのヴァリエーションの記憶から始まっている。
「海賊」という少し特殊な古典バレエ
「海賊」は
マリウス・プティパらによって形づくられた古典バレエである。
しかしこの作品は、他の古典作品とは少し違う道を歩んできた。
たとえば
- 「白鳥の湖」
- 「眠れる森の美女」
これらは“全幕作品”として認識される。
一方「海賊」は違う。
多くの人にとって
まず思い浮かぶのは、
グラン・パ・ド・ドゥではないだろうか。
「部分」が「作品」を追い越したバレエ
「海賊」は、ガラ公演やコンクールを通じて、
👉 “一部”が先に独立した作品である。
特に女性ヴァリエーションは
強いテクニックと華やかさを持ち、
短時間でも観客に強い印象を残す。
👉 作品全体ではなく
👉 “一部”が先に広まった
という現象だった。
ガラ公演、コンクール、テレビ放送。
その中で選ばれ続けたのが、
「海賊」のパ・ド・ドゥだったのである。
私の中の「海賊」
私の記憶の中でも同じだった。
「海賊」といえば、
赤い衣装の強烈な印象。
そしてその中心にいたのが、
エヴァ・エフドキモワだった。
エヴァ・エフドキモワの踊りは、
単なるテクニックの披露ではなかった。
- 音楽との強い結びつき
- 明確で力強い存在感
- 観る者に一瞬で届く華やかさ
それらが揃ったとき、
「海賊」は“作品”ではなく
👉 “記憶される瞬間”へと変わる。
だからこそ私は、
「海賊=エヴァ」としてこの作品を受け取っていたのだと思う。
その踊りは、
ひとつの作品としてではなく、
ひとつの完成された瞬間として記憶されている。
私は、
「海賊」が全幕作品として存在することを、
後になって知ることになった。
「海賊」が持つもう一つの魅力
しかし全幕作品として見ると、
「海賊」は別の魅力を持つ。
- 冒険物語としての分かりやすさ
- キャラクターの多彩さ
- 踊りの連続性
そして何より、
踊ることそのものの喜びが前面に出ている作品である。
今あらためて観る意味
今回放送されるのは、
マニュエル・ルグリが手がけた
ウィーン国立バレエ団の「海賊」。
ルグリは、クラシック作品に対して
過度に作り替えるのではなく、
👉 “整えながら生かす”
という姿勢で向き合ってきた人物である。
だからこそ今回の上演は、
👉 「ヴァリエーションとして知っている海賊」が
👉 「作品としてどう立ち上がるのか」
を確かめる機会になる。
まとめ
「海賊」は、少し特別な古典バレエである。
多くの場合、
作品より先に
ヴァリエーションとして出会う。
そして後になって、
その全体像を知る。
私にとっても、そうだった。
だからこそ今、
あらためて全幕作品として観ることには意味がある。
“記憶の中の海賊”と
“舞台の上の海賊”。
その距離を感じながら観ることが、
この作品のもうひとつの楽しみ方なのかもしれない。
NHK BS プレミアムシアター番組紹介
4月20日(月)午前0時05分~
◇ウィーン国立バレエ公演「海賊」【再放送】
原振付:マリウス・プティパ ほか
振付:マニュエル・ルグリ
音楽:アドルフ・アダン ほか
<出演>
コンラッド:ロバート・ガブドゥーリン
メドーラ:マリア・ヤコヴレワ
ギュリナーラ:リュドミラ・コノヴァロワ
ランケデム:キリル・クラーエフ
ビルバント:ダヴィデ・ダート
ズルメア:アリーチェ・フィレンツェ
セイード・パシャ:ミハイル・ソスノフスキー ほか
ウィーン国立バレエ団
管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団
指揮:ワレリー・オブジャニコフ
収録:2016年3月31日、4月2日 ウィーン国立歌劇場(オーストリア)
前回放送時の「海賊」番組紹介ブログ記事


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