
冬の澄んだ青空に、冷たい風が吹き抜ける日。
庭の椿の花が、風に揺れながらも美しく咲いていました。
そのときふと、高校の恩師から届いた年賀状の言葉が心に浮かびました。
「一日一日を大切に生きたくなりました。」
年齢のせいかもしれません。でもそれ以上に、新型コロナの影響があるように思います。
あたりまえだった日常が、ある日突然、制約のある非日常へと変わることがある——そんな現実を経験しました。
例えば、マドレーヌを紅茶に浸したとき、香りが記憶を呼び覚ますというプルーストの小説のように、
私の場合は、椿の花と空の景色が、あの恩師の言葉を思い出させてくれたのです。
空の青さ、風の冷たさ、花の香り。
そんな自然の美しさを、私はこの一年、気づかぬうちに感じ取れなくなっていたように思います。
花鳥風月を友とし、詩歌や絵画に親しみながら、風雅に生きてきた日本の先人たち。
彼らが大切にしてきた「感じる心」「芸術を愛する心」を、私は忙しさの中で、そして不安に翻弄された日々の中で、いつしか遠ざけていたのかもしれません。
でも、だからこそ。
自然を愛し、芸術に触れ、感性を取り戻すこと。
一日一日を、もう一度見つめ直してみること。
今という不自由な時間は、もしかしたら、私たちが忘れかけていた「心の豊かさ」に立ち返るチャンスなのかもしれません。
芸術に心を寄せながら、今日という日を、丁寧に、大切に過ごしていきたいと思います。
