
2025年秋、ミスティ・コープランドがABT(アメリカン・バレエ・シアター)を引退します。
それは、一人の偉大なダンサーの終幕というだけでなく、バレエ界の価値観を塗り替えた「ひとつの時代の終わり」を意味します。
彼女が切り拓いた道は、単なる「黒人初のプリンシパルダンサー」という枠に留まりません。
本記事では、ミスティ・コープランドがバレエ界にもたらした多様性の価値と、その深い功績について振り返ります。
コープランドとは誰か:バレエの枠を超えた存在
ミスティ・コープランドは、2015年にABTの史上初の黒人女性プリンシパルとして歴史を塗り替えました。
しかし彼女の存在が特別だったのは、「初」だからではなく、その後のバレエ界に本質的な変化をもたらしたからです。
- 豊かな筋肉と力強い演技で、「細く白い」理想像を覆した
- 広告やメディア出演を通じて、バレエを一般社会に開いた
- 財団設立や教育活動で、次世代育成にも注力
彼女は、“踊るだけのダンサー”ではなく、価値観そのものを刷新する改革者だったのです。
多様性がバレエにもたらした3つの大きな変化
1. 「美の基準は一つではない」——体型・人種の固定観念を打破
長らく「白くて細く、均整のとれた身体」が理想とされてきたバレエ界。
しかしコープランドは、自身の筋肉質な身体でオデットを演じ、伝統と対峙しながらも圧倒的な表現力で評価を勝ち取りました。
💡 いまや、様々な体型・背景のダンサーが主役に立つ時代。
「バレエにふさわしい身体」ではなく、「伝えたい感情と動き」が重視されるようになったのです。
2.「語れるバレエ」へ——感情と物語が多様な視点から描かれる
バレエは本来、身体と言葉で物語を伝える芸術です。
多様な出自を持つダンサーが演じることで、古典作品にも新たな意味が生まれます。
- 異なる肌の色のロミオとジュリエット
- ラテン系のジゼル
- アジア系による白鳥の湖
こうした舞台は、単なる話題性ではなく、観客の共感や新たな問いを呼び起こす力を持っています。
3.「閉じた舞台から、開かれた社会へ」——新しい観客との出会い
ミスティはUnder ArmourやセイコーのCMなどにも出演し、バレエ界の外にいる人々にもアピールしてきました。
これにより、
- バレエに馴染みのなかった人々が劇場に足を運ぶようになり、
- 若い世代やマイノリティの子どもたちが「自分もなれる」と夢を持てるようになった。
🌱 芸術が一部の人だけのものではなく、誰にでも開かれたものになる。
それは、バレエにとっても大きな進化でした。

コープランドが遺した「レガシー」は、これからも続いていく
引退後も、彼女は教育、執筆、財団運営を通してバレエ界に関わり続けます。
単に舞台から去るのではなく、「新しいバレエの在り方を創る」活動を続けることでしょう。
バレエは今、伝統と革新、多様性と芸術性が共存する時代へと舵を切っています。
その中心に、確かにミスティ・コープランドという存在がいました。
多様性とは、「なんでも許す」ことではありません。
どんな人にも“本気で挑戦する機会”が開かれること。
その最前線に立ち続けたミスティ・コープランドは、バレエ界だけでなく、表現芸術全体にとってもかけがえのない存在でした。
バレエの未来は、もっと自由で、美しく、ひらかれている。
彼女の歩んだ道が、それを証明してくれています。
海外で活躍している日本人ダンサーも多くなってきました。
「バレエ」が開かれた舞台へ進化しているいま、これからバレエを始めて将来海外で・・・
そんな夢をもっている子どもたちのためにも、私たちにできることに力を注ぎたい。
多くの若い日本のバレエを志す子どもの未来のために。



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