
バレエのレッスンでは、先生がいろいろなことを話します。
「背中を長くしてみよう」
「音楽をよく聴いて」
「もう一度やってみよう」
「今度は反対の足です」
子どもたちにとっては、踊ることに夢中になるあまり、先生の言葉が耳に入ってこないこともあります。
でも、レッスンを重ねていくと、少しずつ変化が見えてきます。
先生が話し始めると、身体を止めて顔を向ける。
話を最後まで聞いてから動き始める。
そして、言われたことを自分の身体で試してみる。
これは、バレエが上手になるためだけの変化ではありません。
「人の話を聞く」という力が、少しずつ育っているのだと思います。
「聞く」と「聴く」は、少し違う
音楽を聴くとき、私たちは耳だけを使っているわけではありません。
音の強さや速さ、間、雰囲気まで感じながら聴いています。
先生の話を聴くことも、どこか似ています。
ただ言葉を聞いて終わりではなく、
「先生は何を伝えようとしているんだろう」
「自分はどう動けばいいんだろう」
と考えながら聴く。
そして、その言葉を身体に移していく。
バレエのレッスンでは、この「聴く力」がとても大切です。
身体を動かす前に、耳が動いている
小さな子どもたちは、先生の動きを見て覚えることも多いものです。
けれど、見て真似するだけではなく、先生の言葉を聴いて、自分の身体を動かすことができるようになる。
そこには、一つの成長があります。
「言われたから動く」のではなく、
聞いたことを、自分の身体で考えてみる。
その積み重ねが、やがて自分で踊る力につながっていきます。
レッスン中に、先生の話を聞けるようになる。
それは、とても小さな変化に見えるかもしれません。
でも、その小さな変化の中には、
「相手の話を受け取る」
「考える」
「自分で動いてみる」
という、これから先の学びに必要な力が詰まっています。
待つことも、聞くことも、レッスンの一部
バレエでは、いつも自分が動いているわけではありません。
順番を待つ時間があります。
先生の説明を聞く時間があります。
ほかのお友だちが踊っているのを見る時間もあります。
一見すると、踊っていない時間です。
でも、本当はその時間にも、たくさんのことを学んでいます。
先生の言葉を聞く。
お友だちの動きを見る。
音楽を聴く。
そして、自分の身体の中に取り入れていく。
だから私は、レッスンの中で「聞く」ということも、大切な練習の一つだと思っています。
先生の言葉が、いつか自分の言葉になる
子どものころに先生から何度も言われた言葉が、大人になってからふと思い出されることがあります。
「背中を長く」
「音楽をよく聴いて」
「最後まで丁寧に」
そのときは、ただ先生の言葉だったものが、いつの間にか自分の中の言葉になっている。
そして、誰かに言われなくても、自分で気づけるようになる。
それは、バレエを習う中で育っていく、とても大切な力なのかもしれません。
だから今日も、
先生の話を聞ける耳を育てること。
それもまた、バレエのレッスンです。
踊る身体を育てるだけではなく、
人の言葉を聴き、
感じ、
考え、
自分の身体で表現する。
そんな力も、少しずつ育てていきたいと思っています。
今日のレッスンで、先生の話を聞く子どもたちの姿を見ながら。
その「耳」の成長も、そっと見守っていきたいと思います。
