
「努力は、いつ報われるのだろう。」
この問いは、バレエを習っている子どもだけでなく、保護者の方も一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
毎週レッスンに通い、一生懸命練習している。
家でもストレッチをしたり、教わったことを思い出しながら練習したりしている。
それなのに、思うように上達しているようには見えない。
「頑張っているのに、どうして……。」
そんな気持ちになることがあります。
でも、30年以上子どもたちと向き合ってきて、私には一つだけ確信していることがあります。
努力は、報われる前に必ず見えなくなる。
子どもの成長は、私たちが思っているほど一直線ではありません。
昨日できなかったことが、今日できるようになる。
そんな分かりやすい変化ばかりではないのです。
むしろ、何週間も、何か月も、同じことを注意され続けることの方が多いかもしれません。
「また注意された。」
「まだできない。」
本人も悔しいでしょう。
見守る保護者の方も、少し焦ってしまうことがあるかもしれません。
けれど、その時間は決して何も起きていない時間ではありません。
バレエでは、立ち方一つにも多くのことが詰まっています。
足の使い方。
背中の伸ばし方。
腕の動き。
音楽の感じ方。
先生の話を聞く姿勢。
一つひとつは小さなことですが、それらが毎回少しずつ積み重なっています。
まるで、見えないところで体の中の地図を書き換えているようです。
外から見れば変わっていないように見えても、子どもの体と心の中では、毎回少しずつ変化が起きています。
ある日突然、
「あれ?」
と思う瞬間があります。
昨日まで何度も注意されていた子が、自然にできるようになっている。
周りから見ると、「急に上手になった」と思えるかもしれません。
でも、本当は急ではありません。
その日まで積み重ねてきた何十回ものレッスンが、一つにつながった瞬間なのです。
私は、この姿を見るたびに竹の成長を思い出します。
竹は、ある日突然大きく伸び始めます。
けれど、その前には長い時間をかけて地面の下で根を広げています。
根が育っている間は、何も変わっていないように見えます。
でも、その見えない時間があったからこそ、大きくまっすぐ伸びることができるのです。
子どもの成長も、それとよく似ています。
努力には、二つあると思います。
一つは、結果を求める努力。
もう一つは、自分を育てる努力です。
バレエは、後者の割合がとても大きい習い事です。
技術だけではありません。
集中する力。
話を聞く力。
最後までやり抜く力。
美しいものを感じる心。
仲間を思いやる気持ち。
そうした目には見えにくいものも、一緒に育っています。
だから、技術だけを見ていると、「努力が報われていない」と感じることがあります。
でも、人としては確実に育っているのです。
私は保護者の方によくお伝えします。
「今日は何ができるようになった?」
そう聞く代わりに、
「今日はどんなふうに頑張れた?」
そう聞いてあげてください、と。
結果だけではなく、その日一日の努力を認めてもらえた子どもは、自分を信じる力を育てていきます。
そして、失敗を恐れず挑戦する子へと成長していきます。
努力は、報われる日が来るから続けるものではありません。
努力を続けた人だけが、報われる日を迎えられるのです。
その日は、来週かもしれません。
半年後かもしれません。
一年後かもしれません。
誰にも分かりません。
だからこそ、今日の一回のレッスンを大切にしてほしいのです。
見えない時間は、決して無駄な時間ではありません。
その静かな時間の中で、子どもたちは今日も少しずつ、自分だけの根を育てています。
その根は、いつの日か大きく伸びるための、何より大切な土台になるのです。

コメント